東北震災復興

東日本大震災に直面した日本を終戦の時と重ねるむきもあるが、私は終戦時とも阪神・淡路大震災の時とも状況が違うと思う。

 日本は戦後、ゼロから立ち上がったと言われるが、当時は原発の問題も国際化の問題もなかった。今回、米中韓といった国々は精密機器の部品で日本に頼っていた部分があり調達に苦労している。しかし、日本の輸出が通常に戻るころまでに各国での開発が進めば、どこからも発注が来ないという状況になるだろう。

 あらゆる面で日本は窮地に追い込まれている。そういう危機感を国民全員が共有できているだろうか。政治家はもちろん、国民一人一人も問われている。全員がこの国をどうしていくかを考えなくてはいけない。

 阪神・淡路大震災の時とも同じように語ることはできない。当時私は大阪から神戸に向かって、毎日行けるところまで電車で行き、そこから徒歩で現地に入ることができた。だが今回は規模が違う。あの時は復興に向けた事業や遺児の育英資金などについて兵庫県と話をすれば前へ進んだが、今回は被災した自治体が多数に上り、誰と話をすればいいかもわからない。

 さらに95年当時はバブル崩壊後とはいえ、今よりは日本に財源があった。財源なしに何もできないのは、言うまでもない。最も重要な話が発生から1カ月以上たった今もできていない。

 ようやく復興税の議論が始まった。私もそれは必要だと思う。たとえば食料など生活必需品を除いて時限的に消費税を5%上乗せするとか、土地建物の税率を倍にするとか、さまざまに検討の余地があるだろう。

 今であれば国民は納得するのではないか。国債発行という意見もあるが、みんなで負担を分かち合うという考え方を体現しているのは税金だろう。

 税で負担するということは被災地に対し「国民すべてで被災地を支える」というメッセージでもある。みんなで助け合わないとこの国はやっていけないということを、首相は明確に国民に伝えなくてはいけない。

 両親またはいずれかの親を失った子どもたちが大勢いる。多くの行方不明者がいる現在、口にするのはためらわれるが、親を失ったがために進学や自身の夢をあきらめるようなことがないよう、さまざまな支援策が求められる。

 阪神・淡路大震災の際は年間1万円の遺児育英資金を10年間、5000人から支えてもらい、およそ400人の遺児が高校を卒業することができた。今回はその何倍もの金額が必要になるだろう。資金を集めるには免税措置が必要だ。また、これまで日本ではあまり定着していないが、養子縁組を勧めるといった発想も必要ではないか。

 日本は、エネルギー、資源、食料を海外に大きく依存している。われわれはエネルギーの問題と共に林業や農業、漁業のあり方なども考えなくてはならない。自立した循環型社会の新しい見本を海外に示せるか、それとも海外から忘れ去られるのか、今が土俵際だ。