死の町さながらの東京

首都のこの大不況をこのまま放置したら、この国の経済はどうなる

 帝国データバンクの調べによると、大震災の影響を受けた倒産が4月末時点で、66社判明した。これは阪神大震災の時の3倍だという。深刻なのは、直接被災地の倒産は1割にすぎず、残りの60社は「あおり」を食ったことだ。とくに「消費自粛のあおり」が20社と最も多い。これはちょっと異常だ。

 大震災と原発事故に目を奪われ、「一緒にがんばろう」と日本中が節約に走っているが、それではマイナスが全国に広がり、日本経済が死んでしまう。そんな瀬戸際なのだ。

 ひどいのが東京である。これまでは首都の賑やかさがどうにか日本の経済を引っ張ってきたものだが、3・11以降は「死の町」さながらだ。夜ともなれば、街灯は消され、真っ暗な中で乗客のいないタクシーが列をなし、頼みのコンビニさえも看板の明かりが薄暗い。ほんの2カ月前には想像もしなかった、ウソのような光景がずっと続いている。

 菅内閣が「電力不足だ」「節電協力を」と騒ぐものだから、企業も駅も店舗も電気をケチり、エレベーターを止める。サラリーマンも早く帰路に就き、カネを使わない。そうやって消費自粛が広がり、あおり倒産も急増なのである。

●落ち込みは25兆円以上!

 だが、東京の消費がこのまま低迷したら大変なことになってしまう。経済アナリストの菊池英博氏が言う。

「大震災や原発事故の影響で、景気がさらに悪くなりそうだ、給料も減るんじゃないかとだれもが不安になってしまった。それで、帰りに“ちょっと一杯”もやめて生活防衛に走っているのです。企業も企業で、交際費や交通費などコストカットで防衛を始めている。あっちもこっちも自粛、節約ばかりですが、こんなことが続いたら、日本経済は沈没してしまいますよ。大震災がなくても、日本経済は深刻なデフレが進行していた。昨年10―12月のGDPデフレーターは前年比2.5マイナスでした。それに大震災がダメ押しとなり、今年1―3月はたぶん3%程度のマイナスでしょう。合わせれば、25兆円以上の落ち込みになる。おまけに外需もひどい。国内生産が落ちていることから輸出も減り、4月も5月も貿易収支はマイナスになりそうです。日本経済の底割れは避けられないといっていいでしょう」

 売れているのは防災や節電のグッズぐらいだから、夜の街同様、景気の先行きは真っ暗だ。

 街に人があふれ、消費が活発にならなければ、経済は回らない。被災地の工場が稼働すれば徐々に国内生産力は上がるといわれるが、モノが売れなければどうしようもない。待っているのは、本格的な倒産ラッシュとサラリーマンの賃下げや大リストラ。そんな非常事態が目の前に迫っているのだ。

●国民からカネをむしり取ることしか考えない底這い政権

 それなのに、菅政権には何の危機感もない。震災対策でわずか4兆円の補正予算をつくっただけである。震災被害はザッと20兆円以上。全然足りない。

「だから10兆〜20兆円規模になる2次補正が焦点ですが、菅総理は、復興構想会議が6月末にまとめる復興ビジョンや、社会保障と税の一体改革案を踏まえて編成すると言っている。つまり、夏ごろから増税とセットでやろうということですよ」(官邸関係者)

 消費税増税を決めなければ、本格的な復旧・復興補正はやれないというのだからフザケた話だ。この大不況の中で消費税率のアップなんて、簡単にやれるわけがない。長引けば長引くだけ、被災地復旧は遅れ、日本経済全体の底割れが進んでしまう。ゾッとする展開ではないか。第一生命経済研究所主任エコノミストの新家義貴氏が言う。

「景気回復には、消費を刺激するような景気対策が必要です。復興需要はあっても、個人の消費マインドが冷え込んだままでは、どうしようもない。復興のV字回復どころか、ヘタしたら震災で落ち込んだまま、底這いでL字停滞です」

 それなのに、増税案に加えて、電気料金値上げも国民にのませようとしているのが菅政権だ。デフレ不況に何の手も打たず、庶民のサイフに手を突っ込むことしか考えていない。まったく狂気の無能政権だ。

●戦後混乱期へ逆戻りか

 今回の大震災と原発事故は「戦後最大の危機」といわれるが、このままだと本当に「終わりの始まり」になってしまう。新家義貴氏が続ける。

個人消費に占めるウエートが大きい自動車は、工場が操業を再開したものの、稼働率は通常の5割程度。供給不足はしばらく続く。7月に地デジの完全移行が終われば、薄型テレビも頭打ち。エコポイントで需要の先食いをした分、反動で家電類は落ち込みが激しくなる。そこへきて、夏場の電力不足も深刻です。計画停電は避けられても、節電のため輪番休業や営業時間の短縮は必須。当然、生産性は落ち、雇用や賃金の減少に響いてくる。震災後の業績が反映される冬のボーナスは大幅減になるでしょう」

 プラス材料がないのだ。夏から今年後半にかけて、かつてない不況に向かうのは間違いない。

「景気を悪くすることしか考えない菅首相は、日本経済にとって、足を引っ張る存在でしかありません。このまま任せていたら、空前の不況にのみ込まれ、取り返しのつかないことになる。直ちに貧乏神首相を退陣に追い込んで、3年間で100兆円規模の内需拡大策をバーンと打ち出さないと、間に合いませんよ。埋蔵金50兆円と建設国債50兆円で、増税なんてしなくても財源は十分にあるのです」(菊池英博氏=前出)

 生活保護受給者が200万人を突破したとニュースになっている。戦後混乱期の1951年以来の最悪レベルだ。経済大国を自称するこの国は、バカな指導者によって、どこまで転がり落ちるか分からなくなってきた。