政治の無策

携帯電話のコスト削減のために、東芝はついに国内生産撤退を決めた。シャープも輸出を大幅に減らし、海外で販売する液晶テレビは海外に生産委託していくという。

東芝やシャープが国内生産を縮小
 また、5月21日の日経新聞一面トップの見出しは衝撃的だった。

 「ソニー、調達先を半減 / 2500社を1200社に」

 これまでバラバラだった部品や素材の調達先をグループで一本化したうえで、調達先を半数に絞り込むという。1社当たりの取引量を拡大することで調達コストを引き下げるという戦術だ。90年代末、瀕死の日産自動車をV字回復させたカルロス・ゴーン社長もこのやり方で調達コストの大幅カットを実現した。同社は5月14日に国内製造事業所の再編についても明らかにしている。あのソニーでさえ生き残りに必死なのだ。

 好むと好まざるとに関わらず、世界経済はすでに抜き差しならぬところまでグローバル化が進んでいる。世界同時不況と円高で輸出産業が大打撃を受けているからといっても、複雑な相互依存関係を前提として動いている世界の現実は変えようがない。

 どこの国でも政治屋は人気取りに走りたがるから、不況色が強くなればなるほど保護主義に傾斜しがちだが、そんなものは負け犬の遠吠えにしかならない。新保守主義だとか行き過ぎた市場経済だとか、現実離れした抽象的な批判を繰り返すのんきな評論家が日本では後を絶たないが、それは国際競争にさらされたことのない人びとの戯言でしかない。

 その象徴が政治家とマスコミだ。日本の村社会のなかでしか仕事をしたことのない人々が権力の握っているものだから、日本では冗談さながらの景気論議が大賑わいになってしまう。